おうちの家具の地震対策、大丈夫?

2023/6/22

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地震のケガの原因の約30%~50%が、家具類の転倒・落下・移動によるもの

家具は「重いから大丈夫」と思っていませんか?

震度5弱の地震で、固定していない家具が移動することがあり、不安定なものは倒れることがあります。
震度6弱の地震で、固定していない家具の大半が移動し、倒れるものもあります。
また戸棚類の扉が揺れで開いてしまい、中の食器などが飛び出して散乱したり、スライド式の引き出しも大きく飛び出して、ケガや避難の障害につながります。

家具は壁に“L金具”でしっかりビス固定。
扉や引き出しは地震などの大きな揺れだけに反応して、自然にロックのかかる“耐震ラッチ”を取り付ける。

「いつか」ではなく「いま」、もしもの時に備えましょう。

家具屋のジレンマと責務

わたしたちは家具屋なので、あなたの暮らしがよりよいものになるように、と心を込めてひとつひとつの家具をつくり、お届けしています。
普段の暮らしの中で、あなたに寄り添う家具が、地震であなたを襲う凶器になりかねないということが、とても悲しく、また家具屋としてのジレンマも感じています。
だからこそ、家具屋としてできるだけ正しい情報をお伝えし、必要とされる方があれば最善の方法で安心をお届けしたいと考えています。

水や食料の備蓄、防災リュックの準備ができているご家庭は、結構多いのではないかと思っています。
学校などの公共施設では、耐震工事などが進み、建物の耐震対策は進んでいるように思います。
では、家具の耐震対策はどうでしょうか?

暮らしの道具が凶器になる恐怖

大きな揺れにより、家具は揺れて「転倒」するばかりではありません。
前後に揺れながら歩いて移動してしまう「ロッキング移動」もします。
飾り棚やテレビなどが、タンスや下台等の揺れの反動で飛び立って「ジャンプ」します。
上下分離型のタンスのような家具は、連結していないために「落下」します。
キャスター付きの家具は、大きな弾丸のように「体当たり」してきます。

ケガや人命にかかわる凶器になりうるのです。

また、体にぶつかるようなことがなくても、転倒時にドアが開けられなくなったり、逃げ道を塞ぐことも考えられます。
普段、静かにわたしたちの暮らしを見守る家具たちは、ひとたび地震が起これば予想外の動きでわたしたちを翻弄します。

まずは自分でできることから

椅子やテーブル、キャスター付きの家具類のように、普段から動かして使うものの固定は難しい。
ならば、せめて地震時に出口や避難の導線を塞がない場所に置くなど、お部屋のレイアウトを考えてみませんか?

まず、オープン棚の近くに椅子やテーブル、それからベッドなどの寝具を配置しないようにしましょう。
万一、地震で棚からモノが落ちてきた際に、落下物でケガをしないためです。

同じように、万一地震で家具が倒れた場合、その下敷きになりそうな場所に、椅子やテーブル、ベッドなどの寝具を配置しないレイアウトが安心です。
もし、大きな家具を移動させるのが大変なら、どうぞわたしたちを頼ってください。

そして床や棚、カウンターなどの上に、置きっぱなしになっているものがあれば、できるだけ扉付きの収納棚のなかに収納しましょう。
よく使うものも、使う場所の近くにある棚や引き出しに仕舞うようにしましょう。

なにごとも絶対は難しい。
それでも、0か10かではなく、なにかが起こった時にできるだけ0に近い状態で済むように、今からできることはしておきたいと思いませんか?

熊本地震からみえてきた事実

地震の震度別の状況をまとめた気象庁地震階級関連解説表では、
震度5弱の地震で「棚にある食器類、書棚の本が落ちることがある。
固定していない家具が移動することがあり、不安定なものは倒れることがある」、
震度6弱の地震で「固定していない家具の大半が移動し、倒れるものがある」と解説されています。

2016年の熊本地震では、震度7を観測する地震が1回、6強の地震が2回、6弱の地震が3回発生しています。
その地震時に発生したケガの原因の30%近くは、家具類の転倒やタンス等の上からのモノの落下によるものでした。
さらに、地震後に転倒した家具類の片付けや割れたガラス類でケガをされた方も12%ほどいたそうです。
上記の数字は戸建住宅の場合で、マンション等になると地震時が40%、片付け時が20%と数字が跳ね上がります。
また電子レンジのような重い家電が、数メートル先まで飛ばされたという報告もあります。

実際にどのくらいの世帯で家具類の転倒対策をされていたかというと、調査対象の約12%とのことです。
では、対策をされていなかった世帯の理由はなんだったのか?
約90%の世帯の方は「大きな地震が起きるとは思っていなかった」から。
だから対策をしていなかったのです。

富山の活断層の危険度ランクはSランク

わたしたちの会社がある、ここ富山は全国でもっとも地震の少ない県です。
わたし自身もですが、両隣にある石川県の能登や、新潟県で大きな地震が起こっているにもかかわらず、どこか地震への危機意識が薄いことを否めません。
「ここは大丈夫だろう」という根拠のない楽天さで過ごしています。

しかし、こうした大規模な地震は、いつどこで発生するか分からないのです。
現に、先にあげた熊本も127年前の1889年にM6.3の地震が発生して以来、大きな地震もなく、非常に安全な地域と信じられていました。

ここ富山県では1930年、93年前に、震度5を記録する地震が発生しています。
さらに今から165年前の江戸時代には「安政の大地震」で立山カルデラが崩壊し、地震や洪水で400人以上の方が亡くなっているのです。

富山市にある呉羽山活断層は、危険度ランクではSランク。
Sランクとは、今後30年以内の地震発生確率が3%以上と最も警戒度が高いランクです。
先の熊本地震を引き起こした布田川断層帯は、地震直前でAランク(Sランクより低い評価)でした。
そして、呉羽山活断層が動けば、震度7強の地震が発生すると想定されています。

もう一度言います。
地震のケガの原因の約30%~50%が、家具類の転倒・落下・移動によるものです。
食器棚や本棚、冷蔵庫や電子レンジなどの、大きな家具や家電を、できるだけ早く固定すべきです。

その耐震対策、ほんとうに大丈夫ですか?

防災意識の高いご家庭では、すでに耐震対策をとられていると思います。
でも、その対策、本当に大丈夫でしょうか?

ホームセンターや100円ショップでも、さまざまな耐震グッズが販売されています。
よく見かけるのが突っ張り棒のようなポール式のもの。
転倒防止ベルトやチェーン式のもの。
ビス止めが難しいモノや場所には、ジェルタイプのマット式のもの。

L金具

食器棚などの大型家具の固定で、一番強度のあるものは、ビス留めができるL金具です。
熊本地震の例では、L金具で耐震対策した家具の転倒率は0%でした。*不良施工を除く
ただし、壁にビスを打つ際には、柱や桟や梁、あるいは壁の裏にある下地を探して打ち込む必要があります。
一般的な住宅の壁の下地には石膏ボード(プラスターボード)が使われています。
下地のない場所で、ただ単に石膏ボードにビスを打ち込んだ場合、大きな揺れが来た時にビスが抜けてしまう可能性が高いです。

突っ張り棒

突っ張り棒タイプの家具転倒防止ポールもよく見かけますね。
でも、これは単体ではなく、耐震ストッパーなどと併用して使用することで強度が増します。
突っ張り棒を使用する際には、設置位置や本数も大切です。
壁にビスを打つのと同様に、天井も梁を探して垂直に入れる必要があります。
家具は壁にぴったりとくっついた状態で、家具の両端に1本づつ、壁に近い奥の方に取り付けるのが、正しい位置ですが、そこに下地はありますか?
梁のないところに転倒防止ポールを入れてしまうと、大きな揺れの際に天井に穴が空いて、転倒防止ポールが抜けてしまうことがあります。
また、正しく設置できていても、ポールを固定しているネジの緩みがないか、ときどき点検してやる必要があります。

ジェルマット

ビス止めできない家具や家電製品には、耐震ジェルマットを使用される方もいるでしょう。
しかし、熊本地震ではマット式で固定した家具の40%近くが転倒しています。
耐震ジェルマットを選ぶ際には、「どれくらいの震度まで耐えられるのか(対応震度)」と、「どれくらいの重さに対応しているのか(耐荷重)」を確認して使用することが重要です。



つまり、どんなに便利なグッズでも、正しい施工がなされていなければ、せっかくの対策も、まるで意味がありません。

家具の転倒対策だけでは、まだ足りない

家具類の転倒防止対策を十分に施しても、もう安心ということはありません。

地震で大きく揺れたとき、たとえば食器棚の扉が勝手に開いてしまったら。
中の食器類は飛び出して散乱し、割れた破片でケガをするかもしれません。
スライド式の引き出しも、突然飛び出して、ケガにつながることがあるかもしれません。
飛び出したり、落ちてきたりしたもので、床が散乱してしまうと、避難が遅れたり、ケガをしてしまうリスクが容易に想像できます。

ならば扉が開かぬようにと、ホームセンターなどで手軽に手に入るベビーガードのような扉ロックを取り付けるのも、ひとつの方法です。
ただ、見た目が悪いですし、開け閉めの多い場所だとロックが面倒になって、結局使わなくなるなんてことも。

そこでおすすめできるのが、“耐震ラッチ”という金物です。
普段は特別な操作も必要なく、もしもに備えてそこに付いているだけで、スムーズに扉が開閉します。
地震発生時にはセンサーが揺れを感知して、扉を自動的にロックします。

収納物の落下によるケガや、モノの散乱によって避難が遅れるといった被害を最小限にする、頼れる機能です。
地震の規模や揺れ方など状況によっては、扉が開いてしまうこともあり、絶対の安全を保証するものではありませんが、この機能がついていることで「できるだけ0に近い状態で済む」可能性は、確実に高くなります。

安くあげることよりも、安心を買うという選択

家具が転倒しないように固定することも、家具の扉が開いてモノが落ちてこないようにすることも、自力で対策することはいくらでも可能です。
ホームセンターでも100円ショップでも、ネット通販でも、グッズは簡単に手に入ります。
DIYに慣れた方なら、その施工も難しくはないと思います。

ただし、それぞれのグッズの長短を理解していること。
必要な機能や性能を満たすものを、正しく選べること。
施工に必要な道具があること。
施工に関する知識があること。

どんなに便利なグッズでも、誤ったセレクトをしたり、誤った取り付け方をしてしまうと、正常に機能しなかったり、すぐに外れてしまったりする可能性があります。
肝心の地震の際に、その役目を果たさなければ、なんの意味もありません。

また、大きな家具はその上部と壁にL金具をセットし、ビスで固定する必要があります。
脚立に乗りながら高い場所で、正確に下地の場所を探し、腕を伸ばしながら電動ドライバーでまっすぐビスを打つのは、案外難しい作業です。
脚立からの転落事故も実際に起こりえます。

自力でやれば安く済むかもしれません。
でも、すこしでも不安のある方は、わたしたちのような専門知識のある業者に依頼してください。
あなたが手にするのは、より確度の高い安心です。


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