材料について

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無垢材という選択肢

木のいのちを使い手に繋ぎ、共に暮らすひとも生かされる家具

オリジナル家具や雑貨の製作にあたり、わたしたちはベースとなる材は無垢材を選びました。
ただ、無垢材を使うことには、少し迷いや考えもありました。
基本的には重いですし、水や直射日光に弱いので、どこに置いてもいいというわけではありません。
ちょっとした気配りも必要になれば、ときどきのメンテナンスも大切です。

それでも、おもに使い手の方の暮らしに寄り添い、その使い勝手や機能性をより重視するオーダー家具とは少し違う切り口で、シンプルで機能や用途をかっちり限定せず、ひとの五感に訴え、ゆったりとした時間の流れとか即物的ではない豊かさとか、ただ単純に木のあたたかさみたいなものを感じられる、そういう家具であってもいいのではないかという思いもありました。

そして「木はいいですね、温かみがありますよね」と多くの方が口になさるのにはちゃんと理由があって、木は生きていることがひとの感性にちゃんと伝わっているからだと改めて思ったからです。

わたしたちは豚や牛や鳥や魚はもちろん野菜や果物もふくめ、それらを食べなければ生きていけないわけで、そういうときわたしたちは意識するしないに関わらず、いのちをいただいているのです。
無垢材で家具をつくることもまた、木のいのちをいただいているのだと思います。

自然のなかでは、本当はひとも木も対等な存在で、ならばそのいのちを最大限に生かし、そのいのちを使い手に繋ぎ、共に暮らすわたしたちも生かされるような家具でありたいと思います。
ちょっと大袈裟で照れくさいのですが、そう思うのです。


同じ樹種、同じ家具でも、ひとつとして同じもののない個性

無垢材とひとくちでいっても、さまざまな樹種があるなかで、わたしたちはオリジナル家具のベースには「ナラ」と「タモ」を選びました。

ナラ、タモともに色合いにくせがなく、流行のスタイルにも王道のスタイルにも、また和洋を問わず、どんなインテリアにもあわせやすいこと。
もともと北海道を中心に日本に広く分布している木であり、日本人の多くがイメージする、もっとも「木らしさ」のある木のように思うことが、その理由です。
主張しすぎないのに、実に「木」らしく、そこに在るのです。

ナラならばオーク、タモならばアッシュという方が、ピンとくる方もいるかもしれません。
実際に北米材のホワイトオークやホワイトアッシュなどと、その見ためなどはよく似かよっています。

ナラとタモ、どちらの材も、動きのある木理の特徴を活かしながら、熟練の家具職人が1枚1枚見定めながら接ぎ合わせることで、同じ家具であっても、ひとつとして同じもののない個性が、そこには生まれます。

雑貨類はそのもののボリューム感が小さく、例えば床やテーブルなどインテリアで多くの面積を占める主材と、違う材を持ってきてもケンカする心配がありません。
家具よりも手に取りやすい価格帯でもあるので、できるだけいろいろな樹種からお選びいただけるよう、濃い色目のウォルナット、明るい色目のメープルなど、数種類ご用意しています。

現在、多くの材は海外からの輸入材に頼っており、中国、ロシア、北米がおもな原産国ですが、cozy.ではそのときどきで、樹種ごとで、できる限り最良の材料を厳選して使用しています。


オリジナル商品でよく使用する材種について

無垢材が一番上等というのは間違った認識です

というのも、また語弊があるかもしれませんが。
実際、同じ体積で比較したなら、無垢材が一番高価だと思います。

お伝えしたいのは、その家具にとって、その家具を使うあなたにとって、なにが一番ふさわしいのか?ということです。
使い方や置き場所、実際の暮らしの導線上で、その家具に一番しっくりくる、適材適所な材種が必ずあります。

無垢材-むくざい-

森で育った木を切って、1本の丸太から必要なサイズの木材を直接切り出して、削ったり整えたりして四角形の柱状だったり、一枚板に加工した木素材のことです。
接着など人工的な加工を施していない、100%自然素材です。

メリット
無垢材は家具になっても、変わらず呼吸を続け(調湿作用)、生き続けています。
ひとと同じように歳をとり、色に深みが出てきたり、反対に少し色褪せたり、樹種ごとに味わい深い表情の変化を見せます。
その経年変化こそが無垢材の一番の魅力といえるでしょう。

質感や素材感のよさ、頑丈さに裏付けされた重厚感、そこからにじみ出る圧倒的な存在感は他者を圧倒するでしょう。

木そのものですから、キズがついても表面を削ることも可能で、長い時間、メンテナンスしながら愛着を持って使うことができます。

デメリット
一方で無垢の木材は生きているので、使う場所の気温や湿度、季節によっては、膨張伸縮を繰り返し、乾燥でひび割れや反りが起こることがあります。
また一般的には重量があるため、ひとりで取り回しをしたりするのには向いていません。


突板-つきいた-

このスライスされたものをベニヤなどの下地合板に貼るのです


突板とは無垢材を薄くスライスしたもので、一般的には0.2mm~0.9mmくらいまでのものが多いと思います。
薄くても、そこは100%自然素材です。木の風合いがちゃんと感じられます。

そのスライスしたシートをベニヤなどの下地合板に貼り付け、厚みを持たせたものを「天然木化粧合板」「練付(ねりつけ)合板」などと呼んだりしますが、家具業界ではそれらもまとめて「突板」と呼んでいます。

高価な銘木も無垢材ほど多くの材を必要としないため、比較的安価に押さえることができます。(あくまでも無垢材と比べた場合であり、突板を貼るにも高度な技術が要るため、けっして安物という訳ではありません)

一定幅の突板を貼り合わせるため、同じ木目がリピートする特徴があります。(ただしランダム貼りなど、より無垢材の表情に近づける貼り方もあります)
木目の整ったきれいな材が多いです。

メリット
出来上がった家具は、見た目も仕上がりも無垢材のような感じに仕上がり、あまり家具に詳しくない方にとっては、無垢材の家具と見分けはつかないかもしれません。
木の風合いをしっかりと感じられつつ、無垢材と比べると割れや反りのリスクが非常に少なく、構造的に軽量化も可能という点では、無垢材より優れていると言えます。

デメリット
ただしとても薄いシート状の木材を使用するため、傷や凹みには弱いです。
深いキズの場合、下地のベニヤが露出してしまい、補修も簡単ではないため、ちょっと残念な感じになることも。
それをできるだけ回避するために、ウレタンクリア塗装で仕上げることが多く、無垢材のような経年変化を楽しむのには向いていません。

家具といえば北欧家具は有名で人気もありますが、北欧の特にビンテージ家具はほとんどが突板を用いてつくられています。
突板でビンテージ!?と思われるかもしれませんね。
先程の話とまったく逆のことを、敢えて言いますが、長く大切に使っていくことで、突板でも味わい深い経年変化をするということです。


オリジナル商品ではあまり登場しませんが、オーダー家具ではしばしば使用される材種について

*オーダー家具やオーダーキッチンをご検討の方は参考になさってください

集成材-しゅうせいざい-

集成材はその字が表す通り、「複数の材を集めて成形した材」です。

もう少し詳しく説明すると、切り出した丸太から、2~4cm程度の厚さに切り出されるひき板や小角材を乾燥させ、大きな節や割れなどの欠点の部分を取り除き、厚さ、幅、長さの繊維方向をそろえて接着した木質材料をいいます。

複数の材といっても、複数の樹種を混ぜているわけではなく、ナラ集成材とかタモ集成材とか樹種ごとにあります。

ホームセンター等でもパイン集成材あたりはよく置いてあります。
比較的軽くて、安価なので、DIY派の方はよく使われるのでないでしょうか?
パインは柔らかくて、キズが付きやすいので、わたしたちはあまり使いませんが、量販タイプの家具では結構見かけますね。

集成材ですが、強度が高く、寸法や品質が安定している木材のため、加工がしやすく、建物の土台や柱、梁、床などに使われるほか、家具などにも使われ、建物に使われる集成材を「建築用集成材」、家具に使われる集成材を「造作用集成材」と分けたりします。

造作用集成材は、テーブルや机の天板、カウンター、棚板、階段などでよく使われます。
高級感のある木を使用する場合でも、無垢材と比べてリーズナブルに入手することができます。
でも、さすがにウォルナットの集成材を見積してもらったら、ものすごく高くて震えました。

無垢材のような調湿作用はありませんが、きちんと乾燥された比較的小さな部材を使用するため、湿気などに強く、膨張や収縮、反りなどが起こりにくいのが特長です。
加工性も優れているため、職人の技術に左右されにくく、扱いやすいというメリットがあります。
接着して製造するため、無垢材では実現できないような幅、厚み、長さの製品をつくることができます。

ただし、集成材は人工的につくられた木材のため、素材となっている木の種類、使われた接着剤、加工した環境などによって強度が左右される場合があります。
長い期間が経ったとき、接着剤の劣化によって耐久性が損なわれる可能性もゼロではありません。

集成材の長手方向に、フィンガージョイントといって左右の手のひらを組んだような、ギザギザの接合部分がところどころにみられますが、ここに荷重がかかると割れたり、折れたりする可能性もあります。

また、無垢材と比較すると、質感や味わいもやはり異なります。
ときどき家具屋さんで集成材のテーブルなんかを「無垢のテーブル」として販売しているのを目にすることがあります。
もともとは無垢材からつくられた材ではありますが、製造方法から無垢板とは分けて考えるべきものですし、家具としての製作方法も違います。
「これって集成材じゃないんですか?」って涼しい顔で質問したことがあるんですが、「いや、そうですね、えっと、無垢の集成材ってことです」ってよくわからない回答をされました。
なかには、そういう家具屋さんもあるのだと知っておいて欲しいのです。


④シナ合板-しなごうはん-

シナ合板の説明をする前に、まずベニヤについてお話したいと思います。

DIYバリバリの方にはおなじみだと思いますが、そうでない方でも、ベニヤって一度は耳にしたことがあると思いますし、なんとなくアノことだろうと頭に思い浮かぶ方も多いと思います。

一般的にベニヤといえば「ラワンベニヤ」を指します。
ラワンとは南洋原産の樹木で、日本の建築文化を長年縁の下で支え続けている木材です。

大根のカツラ剥きのイメージで、大きな一本の木をスライスしていった状態が「ベニヤ」で、そのスライスしたベニヤを接着剤で、互い違いに木目方向を直交させるように貼り合わせることで、厚みと強度をもたせた板にします。

これをラワン材を用いてつくったものが「ラワンベニヤ」でみなさんの頭に浮かんでいるアレです。

このラワンベニヤの表面に、同じくカツラ剥きしたシナを貼り合わせたものが「シナベニヤ(シナ合板)」になります。

数ミリのラワンベニヤとシナベニヤを、互い違いに貼り合わせたものを、オリジナル商品「木のダストボックス」で使っています。
小口がコントラストの強いシマシマになります。


ラワンベニヤではなく、シナベニヤ同士を互い違いに貼り合わせたものを、「シナ共芯合板」といい、その美しい木口面を生かした家具などに使用します。
ミルフィーユのようにきれいに折り重なった切断面が現れますが、こういうものを積層合板とよんだりします。

日本におけるシナの主な産地は北海道です。
淡黄白色で年輪も薄く不明瞭でぼんやりとしていますが、たおやかな美しさのある木目です。

表面がとても滑らかで、落ち着いた色味もあいまって上品な雰囲気があります。
独特のきめ細やかで滑らかな質感をもち、比較的安価な割には、その仕上がりのよさから、内装材として人気があります。

木材としては柔らかい方なので、乾燥が容易で、熱圧接着しているため含水率が低く、温度による膨張や収縮が少ないというメリットもあります。
また加工性が高く、厚みのないものは軽量で扱いやすいです。

一方で、決して強度が高い木材ではないため、柱や梁などの建築の構造材には不向きです。
紫外線による影響でわりと早く濃黄褐色に経年変化し、経年劣化によって表面が剥がれやすくなることがあります。
湿気を吸収しやすく、保存性がやや低いです。
施工に不備があるとカビが発生しやすいというデメリットもあります。

また、シナベニヤはとにかく汚れに弱いです。
その繊細さたるや運搬時などにギュッと触るだけで、指紋がくっきりはっきりと残ってしまうほど。
表面を塗装して汚れから保護すると同時に、劣化を防ぐ必要があります。
ウレタンクリア塗装を施せば、上品な木目を生かしながら、高級感も生まれます。


⑤ポリ合板(ポリ板)-ぽりごうばん-

単色から木目などの柄ものまで数百の色数があります

ポリ合板とはポリエステル化粧合板の略です。

合板の表面に化粧紙を貼り合わせ、そこにポリエステル樹脂を塗布しフィルムをかけた後に樹脂を延ばして硬化させた板です。
表面は天然木ではなくポリエステル樹脂で成型された、厚さ2.5mm~4.0mmの板です。

以前は表面がツルツルとした微光沢のある表情のものが多く、いかにも工業素材なイメージでしたが、最近はマットな仕上がりのものや、かなりリアルに木目のテクスチャーを再現したものもあり、一般の家具に使用するのに遜色がなくなってきたと思います。


実際に商業施設や公共施設、医療・福祉施設、オフィスビルなどでは、ポリ合板を表面材に使用した家具が多いです。
つまり不特定多数の方が使用される場所で、多用されることが多いです。
それはある程度キズや汚れに強く、メンテナンスが楽というメリットがあるからです。

単色(無地)・木目・石目・鏡面・不燃素材などのほか、アルミやステンレスを表面に使用したり、エンボス(凸凹)加工がしてあったり、抗菌加工やゴキブリが嫌がる成分で処理してあったりと見た目も機能性も様々です。

後に説明するメラミンに比べると、下地が合板なため、ややキズが付きやすいですが、性能の向上は目覚しいものがあります。

メラミンと比べて安価な材でしたが、ウッドショックおよび石油価格の高騰により、下地のベニヤも表面のポリエステル樹脂の価格も上がり、いまや結構な高級材です。
それでも、コストダウンのために突板家具の内部だけ単色のポリ合板にする、といった使われ方をすることもあります。

*ときどきお客様から「ホームセンターでもっと安く売っているのに」といわれることがあります。
量販品の安価な家具に使われているのは、プリント合板と呼ばれるものです。
台紙とよばれる紙に色なり木目なりを印刷したもので、表層に薄い透明コートを施してありますが、紙であることは変わりません。
水に濡れるとすぐにボコボコになるし、セロテープで貼ったものをはがすと表面が破れます。
家具自体の強度もずっと弱いです。
同じだと思われている方がいらっしゃいますが、まったくの別物になります。
価格差は材料費だけではなく、もちろん製作方法の違いにもありますが。


メラミン化粧板-めらみんけしょうばん-

ポリ合板同様、単色、木目などの柄物、金属のものなどがあります

メラミン化粧板とはものすごく簡単に言うと、耐久性のあるプラスチック板材です。

メラミン樹脂とフェノール樹脂を含ませた紙を何層も重ね、貼り合わせ、高温・高圧でプレスして作られます。
2層目の紙に色や柄を印刷することで、木目や色を付けることが可能です。
圧着後、表面処理した厚さは1.0mm~1.2mmです。

硬度が高く、耐熱性・耐水性・耐候性・耐摩耗性・耐汚染性に優れているのが特徴です。

ポリ合板と比べ、圧倒的にキズに強く焦げにくいので、テーブル天板、キッチンのカウンタートップや洗面台をはじめ、家具にも多く使われています。


ある時、洗面台を取り付けに行ったお家で、小さなお子さんが興味津々で作業の様子をみていました。
作業が終わったころ、こちらに近づいてきて、手に持った積み木で思い切り天板を叩いて
「コツコツっていうね~」と満面の笑みでこちらを振り返ります。
焦ったのはパパとママ。

でもご安心を! 
メラミンの硬度は鉛筆硬度でいうと7H以上。
鉄よりちょっと下、真鍮や大理石と同程度です。
「そだね~、コツコツっていうね~。その積み木、他のもみせてくれる?」
とは言え、パパとママのためにそっと移動しました。

無垢材や突板に比べると、水への配慮があまり必要ないため、水拭き等の日々のお手入れが楽というメリットもありますし、多少の汚れであればブラシで擦っても大丈夫です。

ただし一部製品を除き、酸やアルカリ性薬品等には弱く、洗面台の天板の上に白髪染めを置いていたらなんかおかしくなっちゃった!といったことが起こったりします。
強い薬剤や洗剤は、変質や変色の原因になるため気をつけましょう。


材種には、それぞれ一長一短があります。
特に無垢材か突板かは大きく悩まれる方が多いと思います。
意匠面か、機能面か、コスト面か、迷うポイントもひとそれぞれです。

テーブルのような、触れる機会が多く、比較的キズが付きやすい家具は無垢材を。
キズの心配は比較的少なく、扉や引き出しのように開け閉めがあったり、棚板のように上げ下げがあったり、動作のあるもの、収納家具のように取り回しの多いものは突板を。

そんなふうにざっくりでいいのです。
無垢材が一番上等と凝り固まらずに、突板やポリ合板やメラミン化粧板も選択肢に含めながら、考えてみるのも一案かと思います。


樹種について

樹種とは樹木の種類のことです。
ここでは家具の木材となる木の種類について、その特徴などについて説明したいと思います。

木材の表面には、木目をはじめ、様々な表情=テクスチュアがあります。
樹種の違いはもちろん、同じ樹種であっても、その生成環境や樹齢によって、年輪幅の違いや偏り、色合いの違い、強度などが異なってきます。
それはまるで同じ両親から生まれたきょうだいが、どこか似ているところはあっても、やっぱりそれぞれにいいところが違ったりするのに似ています。

それぞれに特徴を持つ木材で、もちろん価格差もありますが、どれが優れているという話ではありません。
ここだけの話、それぞれの特徴を見極めることも、そこまで重要とは思いません。
大切なのは、あなたか好きな樹種はなにか?ということに尽きます。

将来的にもっとも後悔が少ない選択肢は、好きな木材を選んだかどうかです。
そこには色や木目という見た目の差もあれば、手触りや温度や硬さや重さ、いろいろな要素があります。
実際に見て触っていただくのが一番ですが、ここでのうんちく話がなにかの参考になればと思います。


ナラについて

クヌギやブナのようにドングリのなる木であるナラ。
成熟した森の最後に生える、森に生きる木の中で、もっとも進化した構造組織を持ち「森の真打」と称されます。
その圧倒的な生命力で豊かな森を作ります。

日本、中国、ロシアが主な原産地で、特に日本のナラは、数ある広葉樹の中でも最高級材のひとつです。
欧米を原産とするホワイトオークなどの素直な木目に比べて、その木目は力強く精悍で、木のおおらかさや雄大さ、荒々しさと同時にある穏やかなやさしさなど、とても包容力の感じられる存在感のある木です。

育った土壌や環境の影響を受けやすく、時にナラ独特の表情である、虎斑(-とらふ-柾目を横切るような帯状の杢を斑(ふ)といい、虎の背中の縞模様のように似た銀色に輝く木目で、シルバーグレインともいいます)が現れることがあり、個性豊かで多彩な表情をみせる木です。

やや重く、硬い木で、衝撃に強いという特徴があります。
また多くの水分を含む木で、乾燥が難しく、反りなどの動きが比較的大きな材でもあります。
それでもよく長く使っていくことで、深い黄金色へと変化していくさまも楽しめ、とても魅力的な木です。

タモについて

広葉樹の中でも非常に大きく、まっすぐに生長し、際立った存在感を誇るタモは、「白木の女王」といわれ、厳しい寒さに耐えて生長した木は上品で優しい雰囲気の中にも凛とした表情をもっています。

木目は木の中心部まで美しく流れており、明瞭な年輪と、さらに中心部から周辺部にかけて、くすんだ褐色から淡い黄白色へと明確に変化する色味が魅力です。
またその特徴ともいえる筍杢(筍を縦に割ったように中央が山形になった典型的な板目の杢で、木目がはっきりしており、均整がとれた美しいものをいいます)の流れるような模様には自然の美しさと素朴さがよく出ており、繊細かつ大胆な木目は広く人気があります。

力を加えても折れずに「たわむ」という性質からその名がついたように、タモはナラに比べると軽いですが、やや硬く、強さとしなやかさを兼ね備えています。
ケヤキやクリと並んでまとまった均質な材がとれ、加工性にも優れています。
そのため、家具や建築物だけではなく、プロ野球選手のバットやホッケーのスティックのようなスポーツ用品などにも使われています。

ウォルナットについて

ウォルナットといえば、クルミのなる木です。
ウォルナットは北米広葉樹を代表する木材で、「チーク」「マホガニー」と並び称される世界三大銘木に数えられます。

自然のものとは思えないような茶~黒褐色の深く落ち着いた色合いを持ち、豊かできめ細やかなグラデーションを描く美しい木目とあいまって、他の木材では代用がきかない希少性と魅力があります。
独特の黒く輝く褐色の表面は、まるで磨き上げられた宝石のようで、気品が感じられますが、一般的に経年で色が濃く深くなっていく木材が多い中で、ウォルナットは経年で色が褪めていくのも、また不思議な魅力です。
まるで古い写真で見た記憶色のようだと、わたしはいつも思います。

意外なことに、モダンな雰囲気もクラシカルな雰囲気も、和洋どちらの空間にも似合います。
しかも、ちょっと格上げしてくれる気さえします。
柄物だったり、派手な色目のコーディネートにもなんなく対応する万能性があります。

そこにあるだけで存在感を放つ、意匠性の高い木目だけでなく、木肌は適度な油分を含み、とてもしっとりと滑らかで触り心地もよいです。
ただし逆目もできやすい木材です。触るとちょっとガサッとする部分が出現します。

耐衝撃性や耐摩耗性が高く、狂いも少なく、加工性も高い。
お値段が高いだけではなく、見た目のよさだけでなく、ちゃんと木材としての実力も兼ね備えています。
家具や楽器、高級車の内装などにも使われて、人気と知名度の高さは、1,2を争うと思います。
ミラノ大聖堂などの歴史ある建造物にも使用されており、古くから人気があったことが伺えます。

メープルについて

日本では楓-かえで-の名称でも知られるメープル。
わたしはメープルが好きで、息子の名前にも使っています。

北米原産のハードメープルが有名で、透き通るような白さと絹糸のような繊細で艶やかな、上品な木肌で「木の真珠」と讃えられています。
ウォルナットやブラックチェリーと並ぶ北米三大銘木に数えられています。

清潔感と透明感にあふれ、美しくきめ細かな木肌は、さらりと滑らかで心地のよい手触りです。
フレッシュな印象の明るい乳白色から、経年変化で独特の飴色に変化していく様は、女性が年齢を重ねていくさまに似ていて、いつの姿も本当に美しいと思います。
シンプルでナチュラルで、どんな空間にも柔らかく溶け込みます。

またメープルの最大の魅力は、工業製品では絶対に表現できない、自然の産物としての様々な木目の表情にあります。
一般的にはあっさりプレーンな木目が多いですが、ときどきさざ波のような波状杢や小鳥の目のような渦巻状のバーズアイ(鳥眼杢)などが不規則に出現します。
バーズアイに至っては、2000本に1本程度の出現率なので、通常の20~50倍の価格で取引されるとか!
また、ガムスポット(カスリ)と呼ばれる黒い筋状の線模様もメープルの特徴です。

厳しい寒さや雪の重みに耐えて生長したメープルは、硬く、衝撃や摩擦に強く、家具はもちろん、ボーリング場のアプローチなどにも使われています。

チェリーについて

正式には「アメリカンブラックチェリー」といい、あのアメリカンチェリーの実る木です。
日本のヤマザクラと同じバラ科に属しますが、ヤマザクラに比べるとまろやかで柔らかな木目をしています。
アメリカ東部全域が主な産地になり、現代の最高の木材のひとつです。

製材したばかりの頃の中心部は淡い薄桃色をしていますが、長い年月で紫外線の影響を強く受け、変色します。
最終的は飴色に近い、濃い赤褐色になるのですが、その劇的な経年変化は数ある樹種の中でも軍を抜いていると思います。
ただそれがただの日焼けのようだとは思わせない、味わい深い色の変化は、家具に思い出を重ねていった結果のようで、とても愛おしいです。
使い込むほどに風合いを増すという無垢材の醍醐味を見事に体現しています。

緻密で滑らかな木肌は、磨くだけで美しい光沢を持ち、華やかな魅力があります。
ときどき、生長の過程や気候の変化で起こる縮みにより、さざ波杢(リップルマーク)と呼ばれる美しい表情が出現します。

樹液を多く含み、生命力の強い木ほど、ガムポケットと呼ばれる黒い斑点が見られます。
水に強く、耐久性にも優れています。
家具はもちろん、高級なパイプや、燻製のときのチップとして使うとまろやかな味になるそうで、意匠はもちろん、香りも魅力的な木材です。


木の記憶

木の木目には、毎年毎年つくられていく年輪や、その土地々々で吸収した栄養分、芽吹いた枝葉の痕跡などが、その木の記憶として刻まれています。

例えば、は成長のために枝を伸ばした痕跡。
シミのような黒い小さな点の集まりはピンノットと言って、葉や枝の跡。
ガムポケットと呼ばれる黒い筋模様は樹液が細胞の隙間で結晶化したもの。
木が自らのキズを癒やすために、樹皮を飲み込んだ跡はバークポケット(入り皮)と呼ばれます。
同様にキズを癒やすために、導管や細胞に鉱物を取り込んだ跡とされるミネラルストリーク(鉱物線)。

それらは一般的にはキズのように思われがちですが、木には美しい木目と同じように、木が自分たちの歴史を刻みながら生きてきた証としてさまざまに現れています。

そして、美しいゆらぎのように木目に現れる光沢を持った独特の模様だって、樹木が寒さなどの厳しい環境を生き、気候や風土に適応するなかでできた繊維のねじれによるものだったりします。
美しさの裏側にも、木が強く生きてきた記憶があり、美しい木目さえもそのたくましさが刻まれている証です。

そんなしるしを持ちながら、あなたのもとにやってきた家具や雑貨は、やがてそれがあなただけのものだというしるしへと変わることでしょう。

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